本校の目指す生徒像及び生徒の実態に即して、国語科として育成したい能力

多様な学習成果の評価手法に関する調査研究 〈国語〉

2年目の報告




はじめに

(1) 昨年度の成果
 昨年度は、古典において作品の脚本化、実演という言語活動を中心に行いました。この協働的かつアクティブな言語活動を通して得られた最も大きな成果は、生徒が意欲的に授業に取り組んだということです。この研究のテーマである評価ということの観点からは、活動後の相互評価や振り返り(自己評価)によって生徒の学びが深まるということでした。

(2) 今年度の課題
 昨年度の成果を実感しつつも課題として感じていたのは、この研究のテーマである評価をどのように行っていくかということでした。ただ、昨年度の取組の中から得られたのは、評価についての理解が深まったことです。すなわち、「評価」には、授業改善につなげていくいわゆる形成的な評価と、生徒に成績をつけていくための評価との側面があるということでした。この理解の上で、それぞれの評価をどのように行い、どのように役立てていくかの研究をさらに深めていく必要があると感じました。

(3) 今年度の目標
 そこで、本校の国語科として育成したい能力を具体的に設定することがまず大切だと感じました。そして、それに基づいたパフォーマンス課題及びルーブリックを開発し、その成果を検証していくことにしました。具体的な実践としては、昨年の成果をもとにして、古典以外でも多様な言語活動を取り入れた授業を行っていくことにしました。




  1. 人物の心情や情景を読み味わったり、筆者の主張を明確に読み取ったりする力
    [学習指導要領の指導事項との関係:「国語総合」Cのア、イ、ウ。「現代文B」のア、ウ。「古典B」のイ。]
  2. 登場人物の在り方や論者の考え方を踏まえ、他者との意見交換を通して、自分の考えを構築する力
    [学習指導要領の指導事項との関連:「国語総合」Aのウ、エ。「現代文B」のア、ウ。「古典B」のウ、エ。]
  3. 自分の考えを論理的かつ効果的に他者に伝える力
    [学習指導要領の指導事項との関連:「国語総合」Aのア、イ、Bのア、イ、ウ。「現代文B」のエ、オ。]


年間計画

☆印の実施単元をクリックすると、具体的な指導案等が見られます。

実施日/内容  学年科目  実施単元 実践内容
5月 
授業実践 
3年 現代文B 
〈新聞〉
☆読み比べて小論文を書こ 新聞5紙を読み比べた上で、小論文を書きました。
3年 古典B
史記 
 孟嘗君にインタビューしよう 登場人物にインタビューをする形式で読みを深めました。
6月11日
第1回研究授業 
1年 国語総合 
「羅生門」
☆小説の読み方を知ろう  各自が問と答を考えて読みました。
3年 古典B
源氏物語
☆「車争ひ」をワイドショーで検証しよう 「車争い」の場面をワイドショー形式でリポートしました。
6月25日
授業参観
福井県立若狭高等学校訪問
7月7日
第2回研究授業
1年 国語総合
仙人
☆登場人物の心情を、表現に即して味わおう 「羅生門」と「仙人」を読み比べることで主題に迫りました。
3年 古典B
大鏡
花山院出家事件の舞台裏を再現しよう 本文に書かれて以内内容を具体的に考えました。
9月24日
第3回研究授業
3年 現代文B
自由論
☆ピアリーディングで要旨をつかもう ピアリーディングの手法を使って、互いがまとめながら読みました。
10月
授業実践
1年 国語総合
城の崎にて
ジグソー法で小説を読もう 担当を分けて読みました。
3年 現代文B ☆プレゼンテーションをしよう 自分の発表の様子を録画してみてみました。
11月
授業実践
3年 現代文B
入試問題
ピアリーディングで入試問題を解こう ピアリーディングは入試の評論の読みに有効でした。
11月13日
指導教授訪問
早稲田大学教育・科学総合学術院 町田守弘教授訪問
11月20日
研究発表
愛知県国語教育研究会研究大会で研究発表
11月27日
研究発表
愛知県総合教育センター発表会で研究成果の報告
12月7日
研究成果発表会
1年 国語総合
幸福
ピアリーディングで要旨をつかもう ピアリーディングの様式で小説を読んでみました。
2年 古典B
大鏡
実演して読みを深めよう 「競射」を脚本化し、演じてみました。昨年も試みたものです。
3年 古典B
去来抄・三冊子
☆俳句を鑑賞しよう 芭蕉の観点で俳句を鑑賞してみました。



振り返り活動

(1) 振り返り活動の実践

 授業ノートを利用して,毎時の振り返り活動を行いました。授業ノートの指導は以下のように行いました。

 「その日の授業の『指示書』を配布し,ノートに貼付させる」「指示書に従って授業を展開する」「授業後に振り返りを書かせる」「次の授業日の朝,ノートを提出させる」「ノートの振り返りを読んで,授業や指示書を修正する」

(2) 振り返り活動の効果

@ 学習内容への関心・意欲を高める
 生徒の記述の一部を授業の冒頭で紹介して前時の復習に使ったり,クラスで回覧して読み深めや討議の材料に使ったりすることにより,生徒の関心・意欲が高まります。

A 形成的評価及び自己評価の資料として利用する
 生徒の理解度を指導者が把握して次時の学習内容に反映させたり,生徒自身が自分の学習の在り方を振り返ったりすることができます。また,一冊のノートに長期の学習内容と振り返りが蓄積されるので,生徒の学びの深まり,変容が具体的に把握でき,ポートフォリオ評価の資料にもなります。

B 生徒の表現力,自己省察力を高める
 短時間で自分の考えをまとめる活動を毎時間繰り返すことにより,自分の考えを振り返り,表現し,コントロールする力が育成されます。


成果と課題

(1) 具体的な成果
@ 教員の工夫が生まれる
  活動的な授業に対して、生徒の反応が良いので、教員が次はどのように仕掛けようかと工夫するようになりました。
  教員にとっても、意欲が喚起される授業となりました。

A 繰り返すことでのスキルアップ
  同じクラスで複数回実施することで、あるいは日常的に実施することで、生徒の話し合いなどのスキルは目に見えて上達することが分かりました。
  また、他の教科で行ったプレゼンテーションの授業が、違う教科の発表の場面に生かされるなど、教科を越えてスキルが活用できました。

B 成績・入試への反映
  ピア・リーディングを入試問題で行ったときには、生徒自身が問題解法に役立つと実感していました。
  アクティブ・ラーニング的な授業は、それが目的として行われるのではなく、生徒に学ばせる一つの手段、方法として行っています。考えさせたり、パフォーマンス課題を与えたことは、定期テストでの記述問題の解答の向上にはつながっていると感じられました。

C 振り返り活動の有効性
  上述したように、ノートを用いた振り返り活動や、それぞれの単元での振り返りは、非常に有効であることが分かりました。

(2) 今後への課題
@ 越えるべきハードルはまだ多い
  学力の焦点化・具体化,ねらいと学習活動の整合,妥当性の高いパフォーマンス課題及び信頼性の高いルーブリックの作成など,越えるべきハードルはまだまだたくさんあります。継続的に研究していくことで、よりよいものを求めていかなければならないと感じています。

A 評価について
 パフォーマンス課題の設定及び信頼性の高いルーブリックの作成についても、未だ研究の途上です。
 さらに、ルーブリックの評価を現行の学習評価につなげるには難しいものを感じています。しかし、授業評価という観点からは、非常に有効であることが分かります。

B ハード面の課題
 現在の学校のつくりから、狭い教室で、40人ほどの生徒が一斉にグループ活動を行ったりするのは、隣接する教室への影響を考えるとなかなか大変です。空き教室や、特別教室の利用など、上手な方法を考えていくことが必要だと感じています。
 

参考

研究会で、指導担当の先生方からいただいたコメントを次にまとめました。

7月14日研究会   12月9日研究会